広報は見た!ジェフ・ベゾスのストーリー戦略【Ⅰ】
7月に拙著を刊行して以来、様々な企業でお話させていただく機会がさらに増え、反響の大きさを感じております。今回はそのなかでもご質問の多かった、世界屈指のストーリーテラーとも呼ばれるAmazonのCEO、「ジェフ・ベゾスのストーリー作りのポイント」について2回に分けてご紹介します。
Amazon CEOの数多有る発言で最も頻出だったキーワード
“Thinking Backward” ― 私がAmazonの広報時代、ジェフ・ベゾスが発する様々なキーワードのなかでも印象的なのがこの言葉でした。これは「後ろ向きな考え方」という意味ではなく、「逆算して今すべきことを考える」という意味です。 ジェフ・ベゾスは世界有数の企業経営者としてだけではなく、時に哲学的な名言を多く残してきた人物で、そのなかでも「顧客のニーズから逆算せよ」という言葉はご存知の方も多いと思います。 実際にジェフと仕事をしていた私自身も、彼の口から「Thinking Backward」はそれこそ脳内に刷り込まれるほど、よく聞いていました。
ジェフ・ベゾス式ストーリーの作り方
企業がプレスリリースなどで新商品や新サービスを発表する際、大抵は「こんな商品を作りました」「こんなすごいサービスを開始します」というフレーズから始まり、商品やサービスの凄さや企業の想いから綴られていることが多く見受けられます。一方、Amazonでは、プレスリリースでも記者会見でも商品やサービスは最後なのです。まず冒頭で毎回必ず発するのは、
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
「地球上で最も豊富な品揃えを提供すること」
この2つの”表明”から始まります。これはジェフ・ベゾスの「Thinking Backward」に基づいています。 顧客の未来のニーズ&ウォンツを基点にし、そこから逆算して開発された商品やサービスを紹介していく、つまり、ストーリーを展開していくのです。
図式にするとこんなイメージです:
ジェフ・ベゾスの「Thinking Backward」の真意は、「お客様が行動している未来の姿から逆算して(世の中へ生み出す商品やサービスを)考えましょう」ということなのです。
Thinking Backwardがビジネスにもたらすアドバンテージ
経営においても、この「Thinking Backward」は非常に有効です。ジェフの顧客基点は言い換えれば、事業の根幹を支える社員やプロジェクトチームのニーズに置き換えることが可能です。社内のニーズを理解し、共感性の高いストーリーで社員に語るリーダーがいてこそ、社員のパフォーマンスが高まり、企業を前進させることができるのです。
また、ストーリーの作り方・伝え方は、広報を担当している方だけでなく、プレゼンスキルを磨きたいすべてのビジネスパーソンにお役に立てるのではないでしょうか。今日本は「第4次ベンチャーブーム(またはスタートアップ4.0)」の時代といわれており、事業をスタートするための資金を銀行や投資家から調達するためのプレゼン能力は非常に重要になっています。
次回は「ジェフ・ベゾスのストーリーの伝え方」をご紹介します。
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