パーパスブランディングの成功例 〜PRWEEKの受賞企業〜

 

先日、世界有数のPR専門メディアである「PRWeeK」が主催する「Purpose Awards」が発表されました。このアワードは自社の存在意義と社会課題をリンクさせた、優れたPRとコミュニケーションを実践したプロジェクトを表彰する世界的なPRアワードです。
今回、私が個人的に面白いと思った企業や団体の取り組み事例をピックアップしてご紹介したいと思います。

 
 

コロナビール(アンハイザー・ブッシュ・インベブ社)の「Plastic Fishing Tournament」

コロナビールはメキシコで誕生し世界中で飲まれているビールブランドです。ライムを瓶に押し込んで飲むスタイルが特徴ですよね。過去にも「Find your beach」というブランドメッセージを発信しており、今も一貫して海を大事にしているブランドです。

そんなコロナビールが受賞したプロジェクト「Plastic Fishing Tournament」は、海との関係を大事にするというブランドならではの環境への取り組みです。

このプロジェクトは世界の海をきれいにするため、プラスチック廃棄物を海から削減するというもの。
「トーナメント」とあるように、漁業関係者が網にかかったプラスチックを競って回収することで、環境を保護することができ、且つ漁師たちの収入源にもなるという、皆がWin-winになるイベントです。

コロナビールはこのプロジェクトでリサイクル業者やNGO団体とパートナーシップを結び、これまでに回収されたプラスチックは20トン以上、そしてこのメキシコから始まったプロジェクトはメディアや消費者の関心を集め、ブラジルや中国、南アフリカと世界各地に発展しています。

これは企業の取り組みがブランドの存在意義と見事につながり、しっかりと責任を果たしている点で素晴らしい事例です。
コロナビールの公式サイトを見ると、国内でも海の環境保護に取り組んでいらっしゃいます。

「コロナは世界各地でビーチクリーンの活動を推し進めています。」
https://www.corona-extra.jp/protectparadise/

 

パンパース(プロクター・アンド・ギャンブル社)の「#RaiseCareDeliverJoy」

パンパースのブランド・パーパスは、「我が子の健康で幸せな成長を望む親たちの力になる」ですが、このプロジェクトはそれを体現する取り組みになっています。

この「#RaiseCareDeliverJoy」という取り組みは、パンパースが妊婦の医療格差に着目し、健康格差に取り組んでいる団体にヒアリングをして立ち上げたものです。
アメリカでは特に黒人のお母さんは妊娠に関連した死亡が白人のお母さんより3倍も高いといわれています。この格差をなくし、皆が公平なケアを受けることができるよう、制度的な問題にアプローチし、また病院と提携してアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に対してトレーニングを提供、医療従事者に必要な研修を行いました。

これによりパンパースのマタニティ・ヘルス・サイトへのアクセス数は12,000件以上になったそうです。

パンパースの取り組みで特に良かった点は、このブランドが長年、病院と提携して親になる人をサポートしてきており、親とそれを支える医療従事者に必要なリソースを提供してきていることが背景にあり、その延長線上で問題を提議し、且つその課題の解決を行ったことにあります。

 

The Trevor Project and LaunchSquadの「Crisis Contact Simulator」(by Google)

LGBTQ+の若者の自殺防止に取り組む非営利団体、トレバープロジェクトがGoogleの支援で行ったプロジェクトです。電話やメール、チャットで24時間365日、命を救う危機介入サービスを運営するこの団体に、AIで社会課題解決を支援するGoogleのAIエキスパートの技術サポートなどが無償提供される「Google AI Impact Challenge」が活かされた取り組みとなっています。

Googleのパーパスは以前の記事でご紹介していますが、2018年に始まったこの支援プログラムはこのパーパスの一環であることが伺えます。
トレバープロジェクトの「Crisis Contact Simulator」はGoogleのAI技術が使われており、その仕組みはカウンセラーを訓練し、レベルアップするものになっているだけでなく、この技術とカウンセラーを通して得られた情報が、より多くのLGBTQ+の命を守ることに繋がっています。

このプロジェクトではMIT Tech Reviewの独占取材をはじめとする多くのメディアで報道され、トレバープロジェクトの存在意義とGoogleの先進技術が広く知られることとなりました。

このPRWeeKのPurpose Awardsに日本の企業は受賞していませんが、「もしアワードに応募していたら受賞していたのではないか?」と個人的に推奨したい国内企業の取り組みを1つご紹介しましょう。

 

ヤッホーブルーイングの取り組み(国内事例)

株式会社ヤッホーブルーイングは長野県に本社があるクラフトビールを製造・販売する企業です。
パーパスは特に設定されていないようですが、ミッションに「ビールに味を!人生に幸せを!」と掲げており、クラフトビールの提供の先に人々の幸せが繋がることを目指していることが伺えます。

 

この会社にはユニークなプロジェクトが多くありますが、特に「たのしくて、よくかえれる!定時退社訓練」という取り組みは目を引くものがあります。
円滑に定時退社を遂行し、幸せな気持ちでクラフトビールを楽しめる環境づくりの一環として立ち上がったプロジェクトということですが、ビールを美味しく飲むことと社会問題に明るく取り組んでいる様子が動画からも伺えます。

【定時退社訓練】たのしくて、よくかえれる! by よなよなエール
https://www.youtube.com/watch?v=5LG1y2JJA3c

 

この取り組みはまさにPRの真骨頂と呼べるものでしょう。
ただ単に面白おかしくしているわけではなく、課題解決型で話題になるような仕掛けを作っているのがポイントです。このようなパーパスから逆算した施策が増えてくると、社会の共感を得られる企業となっていくはずです。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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