パーパスブランディングを失敗させない3つのポイント

 
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これまでに何度か、「消費者がブランドを選ぶ時に、どんな基準で商品を選ぶか」という消費者の意識変化についてお話してきました。そのキーワードは「信頼」です。そしてその消費者との信頼関係構築のために企業にとって大切な活動となるのが「パーパスブランディング(*1)」です。

 
パーパスブランディング(Purpose Branding)とは 自分たちが社会で ”存在する理由” を世間に認知してもらい共感を得て、長期に渡って認識してもらうことでブランディングの強化につなげるという考え方。 パーパスはビジョンやミッションを形成するための根幹に位置する概念。
 

最近では、消費者だけでなく、採用の候補者にもパーパスが影響しているようです。求人・採用サービスを展開するウォンテッドリー株式会社の調査(*2)では、求職者が企業のパーパスを重視していることがわかりました。同調査によると、 入社時にパーパスを「かなり重視した」人は年々増加し、直近5年間で倍増し、給与よりもパーパスを重視して転職した事がある人は43%に上り、今後そうすることがあると思う人は63%とのことです。そして、 パーパスに共感している人とそうでない人とでモチベーションが高い人の割合に2.5倍の差があるとのことです。

このように、パーパスの重要性への認知が高まる中で、パーパスを掲げる企業が増えてきたことは歓迎すべきですが、その一方で、パーパスを全うする上でどうブランディングしていくかのプロセスに課題を抱える企業も少なくありません。

そこで今回はコンサルタントを入れてもブランディングが失敗してしまうケースをご紹介し、パーパスブランディングを失敗させないための3つのポイントについてお話したいと思います。


*1:「パーパスブランディングとは?今、企業存続に必要な理由」
https://www.astorypr.com/news-all/case/purpose-branding

*2:「企業のパーパスと採用に関する調査」ウォンテッドリー株式会社https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_purpose/

 
 

ポイントその1

「パーパスを掲げることを目的にしない」

これはパーパスを掲げることで満足してしまっているケースです。パーパスを作ることが目的になってしまっているため、パーパスの制定以降も大きな変化は期待できません。

パーパスブランディングは前提として、「パーパス経営を会社が推進していく覚悟があるか」が必要になります。その意思確認がないと、パーパスを掲げても実態がなく形骸化してしまいます。そしてそれは社会から見ても、その会社の言行不一致が気づかれることとなり、信頼は得られないでしょう。

だからこそ、パーパスは広報マターのみならず、経営者にも意識して欲しいことなのです。

このパーパスを掲げることが目的になってしまう傾向は、「パーパス」というワードがトレンドに思われがちだからかもしれません。しかし「パーパス」は一過性のものではありません。

最近こそパーパスがもてはやされていますが、日本の企業のなかには「パーパス」と標榜していなくとも、従来からパーパス経営をしている企業はあります。例えば、企業理念をしっかり掲げている会社などは、その理念に存在意義も含まれているため、パーパスに近しいものになっています。

問題なのは、存在意義を掲げていても、それを意識した経営になっていないことや、社員に浸透させるプロセスがないために社員が意識していない、または共感していないことなのです。

掲げているものが「企業理念」でも「パーパス」であっても、あらためてそこから逆算した事業活動になっているか、社内に浸透させるプロセスがあるか、を見直すことが社内外の信用を得る一歩に繋がります。毎日パーパスを唱和していても、気がついたら自分たちは競合しか見ていなくて、一般消費者の課題解決を意識しないケースも見られます。

パーパスブランディングに着手する際は、会社の掲げた存在意義が社内外で共感されていて、言っていること(パーパスや理念)とやっていること(事業活動)の辻褄が合っているかを同時に整理する必要があります。

あらためてパーパスを制定する際には、社会のどんな課題解決をするのか、そしてどんなミッションを遂行していくのかを明確にしましょう。

 

ポイントその2

「パーパスを発信する前に社内に浸透させましょう」

ご依頼をいただいて実際に企業に伺うと、社員にとっては「パーパスってなんですか?」「ビジョンとミッションとバリュー…今度はパーパス。それぞれ違いがよくわかりません。」という状態のことが実は多いです。

パーパスを社内に浸透させるためには、「自分事」にしてもらうことが重要です。あらためて会社の将来の姿をイメージしながら、「私たちは何のために存在しているのか」を社内でディスカッションします。そこから出てくる皆さんのイメージや意見を踏まえて、トップが「自分たちが存在することとはこういうことだよね」と明確化することが大切です。

社員の皆さんにとって目標数字を達成することが命題であったとしても、今後は、その目標数字がパーパスやビジョンをどう後押しするものなのかを理解し、全社員でパーパスを全うするために事業活動を推進するという意識を持つことが大切になります。
そして経営者から社員に、「私たちはパーパスを全うするために社員に対してこういうこと(行動)を求めています」「一緒に社会に対して応えていきましょう」というメッセージを伝え続けることが重要です。

社員のなかには、ブランド活動をするのはマーケティングやPRといった、外部とコミュニケーションする部署の仕事だと思っている人もいます。しかしながら、パーパスブランディングを実践していく際、従業員一人ひとりが「パーパスを信じて目標を達成していく」ことを、「自分がやるべきである」という気持ちと行動につながらない限りは世間に伝わらないものなのです。

つまり、パーパスは全社でやることなのです。全社から醸し出されるパーパス基軸のブランドプロミス(*3)が社会に理解されることで信頼構築につながります。

*3:ブランド・プロミス=ブランドが消費者に対して約束する品質や価値のこと。あるいは、消費者がブランド側に期待しているモノのこと
https://since2020.jp/knowledgebase/words/332/

 

ポイントその3

「長期的な視点で実行しましょう」

「パーパスを掲げてロゴを変えました」というような”クリエイティブ”だけでは、パーパスブランディングは不十分です。

ロゴなどの見え方を変えても、日々のコミュニケーションの中でパーパスを企業の施策とともに伝えようとする意識がなければ短期的な施策で終わってしまう可能性があります。 例えば決算の発表時、パーパスを意識している会社であれば、

「今期の売上は○○億円で利益は〇億円でした。以上」ではなく、最初に

「私たちはなぜ存在しているのか」という話から逆算しながら
「今、私たちはこういうフェーズにあります」ということを理解してもらい、且つ
「このような施策を社会解決のために実践してきました。今後もその存在意義を全うするために〇〇に投資していき、〇年後の目標を達成する予定です」ときちんと説明しています。

パーパスを掲げている会社であっても、公式資料を拝見すると決算数字の説明に終始していることが多々みられます。株主は数字ももちろん重要視しますが、実は(数字の)上がった下がったという話だけでは共感は得られません。今後パーパスやビジョンの達成のためにどのような戦略を描き、正しい投資をし、成長していくのかを知りたいのです。

AppleやGoogleに投資してきた米国の著名なベンチャーキャピタルが見ているのは企業のパーパスだったりします。つまり、社会での存在意義も説明できず売上見込みを説明されても成長に対する説得力に欠けるということです。

そのような観点から、パーパスから”逆算”して企業のビジョンやミッション、それに基づく戦略を作り、それがあって各組織の目標設定を行うべきです。そして、そのパーパスから逆算した各施策のサクセスストーリーを戦略的に展開することでパーパスブランディングが有効になってきます。これがまさに長期的視点で企業の成長を後押しするパーパスブランディングになります。

 

まとめ

今回はパーパスブランディングを実践する過程で起こりがちな課題についてとり上げました。

パーパスブランディングは最初こそイメージすることが難しいと仰る方が多く、また、今のビジョン・ミッションや事業推進の仕方と整合性を取ることは骨の折れる作業です。ですが、そこに蓋をし、違和感のあるままにしてしまうと、最終的には社内にも社会にも評価されない、つまりは信頼を得にくい会社となってしまいます。パーパスブランディングは社内で納得し、包括的且つ長期的に実践する必要があります。

そしてそれは広報だけで取り組むことではありません。
広報は自社がパーパスを掲げる前に経営の方向性をトップとすり合わせ、そこから逆算して各部署と連携し、適切なPRやブランディングの戦略・戦術を考案していくべきでしょう。

 
 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。
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