失敗・成功事例に学ぶ!危機管理広報トレーニングのすすめ

 

昨今、企業の不祥事に関するニュースがメディアを賑わせている影響か、当社にも危機管理広報トレーニングのお問い合わせが増えています。そこで今回は不祥事を起こした企業の対応事例を見ながら、危機管理の重要性についてお話したいと思います。

 
 

なぜ企業の不祥事ニュースが増えているのか?

最近では東京オリンピックの賄賂問題が取り沙汰されていますが、2022年だけでも、吉野家幹部の不適切発言の炎上や尼崎市のUSB紛失事件など枚挙にいとまがありません。

これだけ多いということは、大企業特有の問題ではなく、多くの組織であり得るということです。吉野家の炎上発言は、あってはならない発言ですが、「もしかしてウチの幹部もどこかで無防備な発言をしてしまうかもしれない……」という不安が頭をよぎった方もいるのではないでしょうか。程度の大小はあれど、多くの企業でも失言は割とありえるケースです。

また、尼崎市のUSBメモリの紛失は、USBなど記録媒体を使っている企業であれば、どの企業においても日頃から想定できる類のケースです。

【不祥事が露呈するわけ】

これはひとえにSNSの普及がもたらしているといえるでしょう。吉野家の件は、不適切発言をした吉野家幹部のマーケティング講座を受講した女性が、その発言に嫌悪感を覚えてツイートしたことから世間に発覚し炎上しています。

たとえ重大な事件・事故として明るみに出ないことや、クローズドな場での出来事だとしても、そこに居合わせた一般の人々によるSNSの投稿に端を発して拡散され、みるみるうちに炎上してしまいます。

且つ、メディアの情報のとり上げ方は、SNSで人が反応し盛り上がっているものに対して敏感にリサーチし、記事化していく傾向にあります。SNSで炎上すると、メディアがすぐにキャッチし、どんどん火が燃え移っていく構造になっているのです。

 

メディアは不祥事発覚企業のどこを見ているか?

企業や団体で危機が発生して謝罪会見をする場合のほとんどがコンプライアンス違反による「不祥事」です。
不祥事を起こした後の企業の「対応」が、より深刻な不祥事と見なされるか、収束させることができるかの分かれ目になります。
記者も世間の人々も、「この会社どうやって対応するのだろうか」ということに注視しているのです。

【企業の事後対応・失敗例】

例えば2022年4月に起きた知床遊覧船沈没事故の社長の対応は、まるで他人事のようで、報道陣からの要請はあったと思いますが、事故発生から5日目にはじめて記者会見を開きとってつけたような土下座で、かつ、謝罪の中で「最終的には船長判断」「客の要望もあった」と責任を転嫁するような発言が目立ち世間の憤りを買ったかたちとなりました。

「このような社長のいる会社だから起きるべくして起こってしまったのだな」と世間に思わせてしまう象徴的な対応でした。

【企業の事後対応・模範例】

同じ事故でも名古屋高速バス横転炎上事故の社長らの対応は評価できるでしょう。

なぜなら、彼等は説明責任をしっかり果たしていたからです。この会社は事故発生の翌日午前中に記者会見を行うなど、素早く対応し、また記者の質問にもしっかり答えていました。恐らく日頃からこのような「万が一」に備えていたのかもしれないと思わせる程だったのです。

【不祥事発生以後の明暗を分けるものとは】

このように不祥事はその後の「対応」で明暗を分けます。どちらにおいても死者を出すという、あってはならない事故でしたが、当事者たちの対応如何で遺族の悲しみや憤りの多寡、世間の心証はだいぶ異なってくるのではないでしょうか。

不祥事や事故などの危機に直面したとき、企業は「モラル」が問われます。
備えがないとパニックになって失言をし、それが炎上して社会の信頼を失ってしまうことになるのです。
それを避けるためにあるのが危機管理広報トレーニングなのです。

 

危機管理広報トレーニングを受けることのメリット

記者会見のシミュレーションの重要性や有事の際に広報としてすべきことは以前の記事(*1)でご紹介していますが、ここでは危機管理広報トレーニングの内容とメリットについてご紹介します。

*1:「「空飛ぶ広報室」に学ぶPRの心得」「有事の際に必要な広報(今やるべき広報その2:「危機管理広報」)

まず企業が危機管理広報トレーニングを受けることのメリットには、

・       備えと心の準備ができるようになること

・       会社の信頼損失を最小限に抑え、企業ブランドを損なわないようにできること

があります。

むしろ不祥事が発覚したのにもかかわらず、その後の対応でブランド力が向上された例もあります。

【ビジネス史上最も優れた危機対応を実現した企業】

世界的な大企業として製薬、医療機器その他のヘルスケア関連製品を取り扱うジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)は、1982年に自社で製造・販売する鎮痛剤を飲んだ人々が次々に突然死するという事件で社会の信頼を一気に失いました。

しかしながら、発覚後のJ&Jの対応が素晴らしく、「ビジネス史上最も優れた危機対応」と賞賛され、事件から40年経った現在も主要な医薬・ヘルスケア企業として健在です。事件発覚直後にJ&Jがとった主な対応は以下のとおりです。

・       衛星放送を使った30都市にわたる同時放送や新聞の一面広告などで消費者に情報公開

・       問合せの対応のための専用フリーダイアル設置(消費者用と報道機関用の2つ)

・       製造・販売の中止と全品回収

・       開発・製造部門や流通経路を米国の検査機関に調査委託

・       警察やその他関連機関への積極的な調査協力

・       不正開封防止のための特殊パッケージの開発

これらの対応から、J&Jが逃げも隠れもせず、先ずは「消費者を守ること」を優先している姿勢が見てとれます。
J&Jはマスコミや消費者からの厳しい追求にも誠意ある対応をし、その後、信頼回復のためにあらゆるステークホルダーに100万回を超える状況説明を行ったといわれています。

世間の不安や心配、懸念に対して真摯に向き合い、丹念にフォローし続けた結果、その企業姿勢が世間の人々の心に響き、倒産の危機を乗り越え今に至っています。

 

危機管理広報トレーニングの内容

AStoryでは2部構成でトレーニングを行います。

前半では、

・       危機管理広報について

・       危機への備え

・       危機管理広報対応

・       緊急記者会見

を中心に前半でレクチャーします。

後半ではシナリオをもとに模擬会見を実施し、元記者の方などから本番さながらの質問を実際に受けてもらいます。
記者の質問には必ず意図があるため、模擬会見ではそれぞれの質問の意図を意識しながら答えていくというトレーニングを行います。

 非常にハードな状況・張り詰めた空気のなかで説明しなければならないという、リアルな感覚を経験することで、自社で想定し得る危機に対して鋭敏な感度も養われることでしょう。

 

【記者が評価した社長の会見】

例えば2022年7月に発生したKDDIの通信障害は、世間への発表が遅れるなど、その過程は良くなかったのですが、記者会見は記者たちから一定の評価を得ています。KDDIの社長による会見は技術にも精通していて説明責任を果たしており、しっかり練習していることが伺えたというのが記者たちの評価でした。

日頃から危機に対して備えをしている会社は、その事後対応に対しては評価を得られます。
自分たちにはどんな危機が起こり得るだろうかということを、常に社内をチェックして「リスト」を作っておくことも大事です。

 

スタートアップ企業ほど薄い危機管理意識

実はスタートアップ企業ほど危機意識が薄い傾向にあります。トレーニングを行う際、彼等から危機リストは殆ど上がってきません。しかしながら意識していないだけで、細かく見ていくとどの企業にも危機の火種は必ずあります。

参考までに、フジサンケイの危機管理研究室というサイト「企業事件・不祥事リスト」は、かなりの頻度でメディアでは大きくとり上げていない不祥事もリストアップされているので、一度チェックして、自社に当てはまりそうなケースがないか確認してみるとよいでしょう。

「ウチは大丈夫」と思っている企業でも、ハインリッヒの法則でいう「ヒヤリハット」なことは組織の内外に潜んでいるものです。

 

またこれはスタートアップに限らずですが、「危機管理は広報だけが担当するもの」と勘違いされている企業も多いです。危機管理は全社でやるべきもので、全社で対応しなければ危機事案は乗り越えられません。

特に謝罪会見は広報ではなくトップ自ら説明責任を果たさないとメディアや世間は納得しないのです。SNSで可視化されてしまう今の時代こそ危機管理を強化し、起こり得るかもしれない危機に備えることも重要な経営戦略の一つに加えてほしいと思います。

 

 危機管理広報トレーニングは1回経験するだけでも意識が大きく変わります。危機管理についてお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。ご興味のある方はお気軽にコチラへお問い合わせください。


 

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