エンゲージメントを高めて強い組織になるための6つの施策
アメリカのグローバルリサーチ&コンサルティング会社が調査した世界の従業員エンゲージメント(従業員の会社に対する関係性)が先日発表され、日本は調査対象国125カ国中124位という結果でした。
日本のエンゲージメントが低い理由と強い組織に必要な施策とは?
日本のエンゲージメントはたった5%
毎年各国の従業員エンゲージメントを測定している米国ギャラップ社の調査で、日本は最低水準でした。
しかも、世界全体ではエンゲージメントが上がっている傾向であるのに、日本は前回と同じ、わずか5%です。
世界平均(23%)を上回っているアメリカに視点を移すと、アメリカ企業はパーパス経営が進んでいる国です。
キャリアアップのために転職する人が多いように思われるかもしれませんが、会社に在籍しているときは会社のビジョンやリーダーシップ、バリューに共感して意欲を持って貢献しているイメージです。
日本が世界と比べてエンゲージメントが低い理由
一方、日本を見てみると、理念経営を行ってきた会社はもちろんありますが、一重に会社の「パーパス(企業の存在意義)」「ビジョン(目指す姿)」そして「行動指針」が社内に浸透しきっていないことにあるでしょう。
実際、そのことに課題感を持っている会社が増えてきているように思います。
パーパスやビジョンは社内外で伝え続けていくことが重要です。
終身雇用制度が崩壊し、人材の流動化が促進されているこの時代において、自社のパーパスやビジョン、行動指針やバリューに共感して、従業員自身が、自分の活動がどれだけ会社や社会に貢献しているかが分からないとエンゲージメントは生まれません。
エンゲージを高める6つの施策
前回も「強い組織作り」に必要なことを記事「ビッグモーター不正問題から目をそらしてはいけない企業の教訓」で紹介しましたが、今回は具体的に6つの施策をご紹介していきます。
1 行動指針の部門版を作る
会社の行動指針をそのままにしていませんか?真に行動指針を会社の従業員一人ひとりに浸透させるには、その行動指針を「部門」や「チーム」といった組織毎に落とし込む必要があります。
会社全体における行動指針が、部門やチームの場合ではどう解釈すればよいのかを深掘りし、より具体化することが重要です。
アマゾンの事例
例えば私が在籍していたアマゾンジャパン(以下アマゾン)では、アマゾン全体の行動指針を各部門に落とし込んだ「信条(テネッツ)」を作っていました。
信条とは、例えばPR部門だと以下のようなものです:
Earn Trust(信頼を築く)という会社全体の行動指針に対して
↓
「誠実であること」自社に不都合なことをごまかすために誤解を招く、もしくは真実でないメッセージを発信することはいなかなるときもしない。Customer Obsession(お客様を起点に考える)という会社全体の行動指針に対して
↓
「お客様を中心にコミュニケーションをとること」地球上で最もお客様を大切にすることが私たちのミッションであり、コミュニケーションする際は常にお客様に注力することを忘れない。などと、自分たちの部門やチームの仕事に関連した内容に置き換えて具体化し、言語化しています。
言語化すると生産性が上がります。言語化していないと個人個人の解釈となってしまい、そうなると会社本来の意図とずれる恐れがあります。
行動指針がないとどうなるか?
行動指針がない会社は、従業員が自己流でコミュニケーションをしがちです。
自己流で「この仕事は上司にこうやって怒鳴られながら教育されてきたんだ」などと、良かれと思って部下に同じことを繰り返し、現代にはそぐわない方法論や精神論で指導をし続けていくと、次第に会社が本来目指すビジョンと乖離してしまう危険性があります。
行動指針は企業や組織の人格を形成するファクターでもあるからです。
行動指針を意識してコミュニケーションしていますか?
行動指針がないのであれば、是非作って欲しいと思います。
様々な価値観が存在する組織では、行動指針がなければ価値観のぶつかり合いになってしまいます。
会社など組織には、ある程度のものさしでコミュニケーションできるようにしないと成り立ちません。
優良企業やエンゲージメントの高い企業には必ず行動指針があり、日常業務で発揮しています。だから行動指針は重要なのです。
2 部下の貢献を具体的に評価する
部下の貢献を積極的且つ”具体的”に評価していきましょう。
部下を褒めようとする上司は多くいらっしゃると思いますが、それでも「褒めた効果がない」上司の褒め方には以下のような特徴があります:
「◯◯さん、最近がんばっているね」
これでは具体性がなく、部下は何をみて褒めてくれたのかが分からず、ピンとこないのです。
褒めてくれていることは事実なので嬉しい感情にはなっても、さらなる成長を促せるモチベーションアップには繋がりません。
具体的に褒めるとはどういうことか?
「あの時君が言ってくれたあの提案が〇〇の会議で経営陣に好評価だったよ」
このように、「いつ・誰が・誰に・どこで・何を・どのように」といった具体性を伴った称賛は相手に手応えを感じてもらいやすくなり、従業員のエンゲージメントに繋がります。
部下を褒める際は5W1Hを忘れないようにしましょう。
3 問題を一緒に解決する
上司には部下のミスや問題を一緒に解決するというミッションがあります。
仮に取引先であなたの部下がミスをしたとしましょう。その時、上司のあなたは部下と一緒に取引先に行き、相手になんと言いますか?
「(部下の名前)がミスをしてしまい申し訳ございません」
は最悪です。
このとき、部下の内心は「え…、自分だけの責任なのか…」と、大きなストレスや不信感、不安などに襲われるでしょう。
「部下だけが悪い」ということは、何か失敗すると、すべて自分(部下)に責任転嫁される社風だと思わせてしまいます。そうなるとチャレンジが生まれない(新しい発想や成長のない)職場になりますし、失敗をしても上司に報告せずに隠してしまうという悪い社風が定着してしまいます。
そうならないためにも、部下のミスは上司も含めた組織のミスであることを先方に指し示す必要があるのです。部下にも自分たちは一枚岩であることを認識してもらうことが重要です。
先ずはお詫びの前に、部下と話し合い、なぜミスが起こってしまったのか、ミスを防ぐ手段や改善できることを探っていき、その答えを持って上司と部下が一緒にお詫びに行きましょう。
4 プロジェクトを振り返る
プロジェクトの課題や反省点について協議する場を設けましょう。
これは成功したプロジェクトにおいても同様です。プロジェクトが成功しても失敗しても「振り返り」は組織や人の成長に必要です。
失敗した場合は、そこにどんな課題があったのか、
成功した場合は、もっと上手くできたとすれば何ができるのか、を話し合いましょう。
この協議の場が部下やチームの成長に繋がります。
もちろん、成功した場合は部下に具体的に褒めることも忘れずに。
アマゾンでは「Still Day1」(常に初日の気持ちでいよう)というスローガンがあります。
「Still Day1」とは、過去の成功にいつまでも浸らず、もっとそれ以上にできることを求め、より成長していける環境を作り続けるためのアマゾンでの合言葉になっています。
5 強みを伸ばす
部下やチームの強みを伸ばしてあげましょう
誰でも潜在的に強みを持っていて、それぞれ自分がもっと成長したいと思っている分野があるはずです。
それを伸ばすには上司の働きかけが重要なのです。ミスばかりしてしまう部下は強みより弱みの克服に注力してしまいがちですが、強みを伸ばす機会は「仕事が出来る」人だけに与えていてはいけません。
前回の記事でもお伝えしたように、「チーム」で成長していくことが大事です。
チームメンバーそれぞれの強みを伸ばすことがエンゲージメントの強化につながります。
6 人格ではなく行動を注意する
部下を注意する際にやってはいけないことがあります。
それは人格を否定です。部下は人格を否定されてしまうと自信を失いモチベーションが上がりません。そして聞く耳を持たなくなるでしょう。それがエンゲージメントを下げる理由の一つです。
人格否定ではなく、その人が取った「行動」について変えるべき所があれば指摘をするようにしましょう。
ビッグモーター問題が発覚した際、ニュースでも人間否定のような社内用グループLINEのメッセージが露呈しましたが、あのような人格否定メッセージ(注意)は論外です。エンゲージメントどころではなく、心を痛めたり会社への恨みを募らせてしまう結果になるのは明白です。
部下を注意するという行為はとても繊細で高度なことです。そこには、部下の成長をどうやって促していけばよいだろうかという観点が必要不可欠です。
その観点を持ちながら、リーダーやマネージャー職の方々自身の行動を変えていかないと、部下の方々のモチベーションやエンゲージメントは上がらないのです。
難しいと思ったあなたにはまずこれから
これらの6つの施策をすべて実践するのは難しいと思われた方は、5分でいいので部下と「1on1」(ワンオンワン)をやってみてください。(1on1の詳細は前回の記事参照)
このとき、指示・命令・チェックではなく、とにかく部下の話を聞くことに徹しましょう。そして理解しようと努めてみてください。
ほんの5分。そこから始めてみてください。
これを続けてみるだけでもエンゲージメントは変わります。
エンゲージメントを高める施策の詳細については拙著『amazonのすごいマネジメント』に掲載しております。また、AStoryでは行動指針を作成するサポートも行っておりますので、ご興味のある方はご連絡ください。
AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。
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