PR&ブランディングの2024年注目トレンド

 

さて、今回は2024年に注目されるPRコミュニケーションやブランディングにおいて、抑えておくべきポイントをお話します。多くのグローバル情報ソースから共通しているもので、日本でも意識すべきトレンドからピックアップしてご紹介しますので、是非貴社のブランディング・PRに活用してください。

関連記事「2023年の注目トレンドピックアップ」(https://www.astorypr.com/news-all/pick-up-the-hottest-trends-in-2003)

 
 

まずはじめに「ブランド」とは何か?

「ブランドというのは自分たちが居ないところで、どのように自分たちのことを言ってくれているかである」

これはアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスの言葉です。

本物の”ブランド”を持つ企業は、パーパスから逆算したコミュニケーションを繰り返した結果、自社が不在の場でも、きちんと自分たちが思うような世界観を世間が言い表してくれています。
ブランドの担い手や広報担当社はもとより、企業としてそのような状態になるようブランディングしていくことを目指すべきだと思います。

それでは2024年に注目すべきPR&ブランディングのキーワードをご紹介しましょう。

 

1.「本物志向/真正性(authenticity)」

2023年に引き続き、「authenticity(オーセンシティシティー)」が重要視されています。

ウェブスター辞典などで知られるアメリカの出版社、メリアム=ウェブスター社が発表した2023年の流行語大賞(*1)でも「オーセンティック(authentic)」が選ばれていることからも、「オーセンシティシティー」はPR・ブランディングにおいて世界の潮流となっていることがわかるでしょう。

ちなみに、オーセンティシティーとは「本物志向」や「真正性」という意味です。
消費者も、「この会社(もしくはブランド)は本物だ」と思えるブランドを支持する傾向が強く、マーケティングコミュニケーションにおいても、その活動のなかでより本物感が重視されることになるでしょう。
取って付けたようなPRやマーケティングではステークホルダーとの信頼構築にはつながりません。

加えて、企業は自社の価値観やビジネスプロセスで”透明性”を保つことがより重要になっていくと思います。

つまり、事業そのものが透明性を保ち、信頼を獲得していきながらコミュニケーションをしている状態が、引き続き求められる1年となります。


本物志向/真正性を実践するには?

「パーパス」から逆算した事業活動がポイントとなります。
そのブランドを展開する企業が、目先の利益に惑わされず、事業活動を通じて社会的責任を果たすこととは何かを問い、実践しコミュニケーションすることです。

2024年も、事業活動、CSRやDEI、CR(*2)を含め、いかに企業の活動が社会課題解決につながっているのかについての説明責任が社会から求められていくでしょう。
そのためには継続したトップの発信が非常に大切です。
※前回の記事(「経営陣のパーパス発信が社員エンゲージメント向上のカギ」)でも言及

対外的なだけではなく、社内に対しても、企業のトップが「本物感、本物志向」という観点で従業員に丁寧なコミュニケーションをしていき、従業員の信頼を獲得していきながら、サステナブルな組織文化を築いていくことが真のブランド構築に繋がります。

*1:出典「Word of the Year 2023」https://www.merriam-webster.com/wordplay/word-of-the-year
*2:【CSR】Corporate Social Responsibilityの略。企業が組織活動を行う上で担う社会的責任。
【DEI】Diversity, Equity, Inclusionの略。従業員の多様な個性を尊重し、それを公平かつ包括的に活かすことが企業において高い価値創出につながるという考え方。
【CR】Corporate Responsibilityの略。企業としての責任。


ヒントとなる記事

「経営陣のパーパス発信が社員エンゲージメント向上のカギ」

もっと読む


 

2.「ヒューマンアプローチ」

様々な媒体でAIを駆使したPR・ブランディングは、2024年も優先度が高くなるといわれています。

一方で、「人間的アプローチ」にもニーズが高まっているのです。
なぜなら、個が孤となる社会、戦争をはじめとした様々な分断などで、人は感情的なつながり、人間味溢れるコミュニケーションを渇望しているから。

そのようななかで、PRパーソンはAIやデータを活用したテクノロジー、デジタルを駆使したコミュニケーションを展開することも重要ですが、それだけだと真のブランドを形成していく上で厳しいと言わざるを得ません。

2024年のPRパーソンは体験型、双方向型のコンテンツや参加型のブランド体験を創り出し、”消費者が求める”人間的なアプローチを、どれだけ事業活動のなかで展開できるかが1つの課題になるであろうといわれています。
オンラインですべて完結するというよりは、オンラインとオフラインをうまく組合せて回遊させたり、オンラインに誘導していくなど、オンラインとオフラインの融合的活用ができると、より効果的なPRコミュニケーションができると個人的にも思っています。

ChatGPTも現段階では、やはり「ツール」感は否めません(人間味はまだ感じないという意味で)。
現時点では便利なモノを活用しているレベル感のため、引き続き人の温かさが感じられる活動が必要だと思います。


ヒントとなる記事

「パーパス最新事例 - パーパス経営・ブランディングを実現するイベントの好例」

もっと読む


 

3.「パーソナライズドコミュニケーション」

2023年のトレンドに引き続き、「量より質」が求められています。
そして、より自分の趣味嗜好を求める消費者が増えていくといわれています。

消費者アンケート(*3)によると、ブランドや企業が自分の消費行動を調べたり、何を自分が欲しているかといった趣味嗜好のデータをとって、個々にパーソナライズしてくれることに、「さほど抵抗がない」という人が30%います。

これはつまり、まったく関係のないモノを押し付けられるよりは、「私だからこそ、コレを勧めてくれたんだ」というピンポイントなアプローチを好んでいる人が多いことの顕れでしょう。
企業側も十把一絡げではなく、

WHOM:ターゲットとしているペルソナのコミュニティに対して、

WHAT:何を訴求して、商品やサービス、企業などをアプローチして、

HOW:どのように理解して欲しいのか

を見直して戦略を立ててみることをお勧めいたします。

ジェフ・ベゾスがいう「ブランド」のように、自分たちが思うような世界観を世間が言い表してくれるよう、「パーソナライズドコミュニケーション」していきましょう。

*3:出典(ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルサーベイ」2023年3~4月実施(n=20,079))


ヒントとなる記事

「(2023年)トレンドその2「パーソナライズPRアプローチ(質>量)」」

もっと読む


 

4.「AIとSNS」

2023年はAI元年となりました。

2024年はデータ分析やコンテンツ生成、戦略立案の支援に加え、AI によってさらに、お客様の趣味嗜好を分析し、潜在的ニーズを的確に捉え、アプローチしたい層に合わせたコンテンツを作っていくことが容易になるでしょう。
今後は、直感的な判断より、データありきの判断がより説得性を増す時代になります。
データ活用はAIを活用しながら、前述した「ヒューマンアプローチ」を念頭にコミュニケーションしていくと、より良いでしょう。

その一方で、注意しなければならないのは「ファクトチェック(情報やニュースが事実に基づいているかを調べること)」です。

ChatGPTは非常に有用ではありますが、まだ誤情報が混ざっていることが多いのが現状です。そのため真偽をきちんと裏取りしながら活用することが必須です。
広報業務は、どこの情報から引用しているのか、どんなソースを使っているかを説明する義務があります。
「〜によれば、」というソースを明らかにするコミュニケーションがPRでは真のブランドを形成する上で引き続き大事になります。

また、マスメディアだけでなくソーシャルメディアの活用も、PRにとって引き続き欠かせません。
最近の傾向では、ポッドキャストのような「読ませる」よりも「聞かせる」方が好まれています。
様々な媒体の適性を考えながら、自分たちのコンテンツがどんなメディアに適しているかを考えながら活用していくと、より効果的なコミュニケーションに繋がっていきそうです。

大事なことはSNSを通じて直接的、且つ即時的にコミュニケーションを繰り返すこと。
それによってリアルタイムのエンゲージメントがより促進できるでしょう。


ヒントとなる記事

「フェイクニュースを生まない広報術」

もっと読む

「日本でのユニークな取り組み事例」(「経営陣のパーパス発信が社員エンゲージメント向上のカギ」

より)

もっと読む


 

5. 「ストーリーテリング」

人が感情的なレベルで繋がる有益な方法として、「ストーリーテリング」は以前から重要視されています。当社が得意としている分野でもありますが、2024年はこれまで以上にストーリーテリングが重要になっていくことが予想されています。

ブランドや企業は自分たちのブランドストーリーを語り、お客様の価値観とつながって、ブランドを中心としたコミュニティを形成していくことが真のブランディングにおいて重要ポイントとされています。
その点では、自社が展開できるオウンドメディアやソーシャルメディアを通じて、しっかりと説得力のあるストーリーを開発して発信し続けることが、よりお客様の共感や理解を得やすくなることが期待できるでしょう。

メディアアプローチは重要なPR施策の一つであることに変わりありませんが、そもそも、自社のメディアのなかでどれだけストーリーが展開されているか、ということが、2024年はブランド構築の大事な要素になっていくと、多くのエキスパートが指摘しています。


ヒントとなる記事

「ストーリーの作り方 〜社内向けプレスリリースを作ろう〜」

もっと読む


 

PR・ブランディングの鍵は「パーパス」

世界中の多くのPR・ブランディングプロフェッショナルたちが挙げている5つのトレンドには、それを実践する上で共通するものがあります。それがパーパスです。
「ヒューマンアプローチ」において、企業にはコーポレートパーソナリティという言葉があるように、「どのような法人格を持っているのか」をステークホルダーに知ってもらうべきであり、その上でパーパスは基点となるものです。

例えば、ただ単に体験型イベントが流行っているからARやVRを使って再現させよう、という考え方ではなく、「私たちはこういう法人格だから、この法人格をステークホルダーに感じてもらえるようなアプローチをしよう」と仕掛けていった方が、より世間からの共感が生まれるでしょう。
「ストーリーテリング」でも、会社の価値観や在り方についてストーリー展開するにあたって基点になるのはパーパスです。

そもそも、我が社は社会においてどんな存在意義があって、どのような成り立ちなのか(なぜこの会社/事業が生まれたのか)、従業員はなぜこのように働いているのかという基軸になるものがパーパスなのです。
そのためストーリー展開していくときも、きちんとパーパスに立ち返ってストーリーを作っていくことを忘れないでください。

 

2024年はPRの重要性がさらに増す

各種メディアのデータ収集&モニタリング会社であるMeltwater社によれば、2023年のPR業界の市場規模は、前年から6.6%増の約1.070億ドル(約15兆円)になると予測していました。今後も伸長が予測されており、PRの役割、そして重要性が増すでしょう。

2024年はパーパスを基点として、AIやSNSを活用しながら、パーソナライズドコミュニケーションとヒューマンアプローチを心がけ、ストーリーテリングを実践して、自分たちが描く世界観を世間が言い表してくれてくれるようPR・ブランディングを強化していきましょう。

 
 

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